サンパな名前の「ルシヨン」という村を目指す。
しかしサンパなはずのそこに着くと、
一件目にして「今日は満杯だよ。ほかも絶対にない」と言われる。
二件目にはB&Bに行くが、
「今日はない」とやはり言われる。
「APT(アプト)に行けば見つかる」と宿の主人に言われる。
そのアドバイスを信じ、
日本人の最強兵器「地球の歩き方」をついに開く。
今度はきちんと予約を、と、
唯一載っていたAPTの宿に電話をする。
名前の響きがどうも好きではなかった。
そして、APT(アプト)に着くはいいが、この暑いのに
街路樹にイルミネーションが飾られたりしている。
あまりの微妙なセンスにすっかりテンションが落ちる。
こんな村に泊まりたくない、と率直に思う。
地図にある通り、電話で予約したホテルの前に着くが、
どうも違う名前である。
不思議に思い、宿の主人と連絡をとる。
「15分で迎えに行くから車の中で待っていて」と宿の主人。
途中、酔っぱらいにガラス窓を叩かれて恐い思いをする。
5人くらいの質のわるそうな人が、
次々とドアをノックしてはあきらめ去ってゆく。
そんな中途半端な行動は、しなくてもよい。
電気をつけて地図を見ていたので、
蛾のように寄って来てしまったようだ。
尚更「APTアレルギー」に加速がかかる。
30分待ってしびれを切らしたころ、ようやく、
何故か家族全員を乗せた車で主人がやってくる。
もう夜の22時半。
後部座席には可愛い子供が3人乗っていて疲れ果てている。
なんだかすまない気持ちになる。
「私たちの車の後をスイーヴルしてきてね」とマダム。
腹ぺこで疲れ果てたわたしたちは、
半ば夢心地・眠り心地で彼らの車の後を追う。
しかし、追っても追っても全く着く気配がない。
APTはLuberon地方の小さな村に過ぎないはずなのに何故?
そのうち、APTを出た印を目にする。
何が起きているんだろう?
どこへ行くんだろう?
「あの人たち、まさかゴーストじゃないよね」
私は真剣に友人に聞く。
どうかな、ひきつり笑いをしながら、友人は必死で後を追う。
そう、彼らは早い。カーブだろうが速度を落とさない。
このままでは命を落とすのでは、と真剣に彼らについて疑い始める。
「ほんとにゴーストなんじゃない?死の世界に誘ってる、みたいな。
こんな夜遅くに子供三人ものっけて皆疲れてて顔色悪いし。
なかなか着かないし」
なんて真剣に相談し始める。
しかし、何度考えてもやはり夢でもない。
20分程走った頃、すっかり丘の上にある村に入る。
あやしい。
でも、ゴーストなんてそう出ないだろう。。
もしかして、わたしたちこそ何かを間違えていた?
むしろそう願いたいほど、恐い。
そこでもう一度「地球の歩き方」を見てみる。
すると...、やってしまった。
「APT」のページの横に、とってつけたように
細文字で「Saignon(シニョン)」という村の説明がある。
その下にわたしたちが電話をしたホテルが載っているのだった。
なんと。ここはSaignonです。
あまりに疲れていたので見落としていた。
隣りの離れた村なのに、わざわざ迎えにきてくれるなんて、
なんてジョンティな人なんだろう。
しかも子供も我慢を強いられている。
今度はゴーストではなく、神々しいものがご主人の背後に
見える気がしてくる。
(疑ってごめんなさい。)
車を降りてさらに驚いたことに、村全体が
あまりにも洗練されている。
暗闇の中に浮かび上がる光景は、
映画の舞台のような場所になっている。
噴水と昔の洗濯場がアートのようにコテンと配置されている。
ホテルというかオーベルジュは、
噴水を望む広場にある。
村全体がシックな石造りで、魂が抜けそうになる程美しい。(この美しさは次回お伝えします♪)
夜なのに。伝わってくる。
こんな素敵なところに導かれるなんて、
なんてラッキーなのだろう。
四つ星ホテルの塀を無様にもよじのぼった甲斐がある。
APTでテンションを落とした甲斐がある。
その夜、実はご飯を食べていないというと、
シェフに言って作らせる、と23時にも関わらず言ってくれる。
ミシュランに載っていることは、後で知る。
友人と疲れの癒しに開けたこのワインは「LE CANORGUE 2005」。
映画「プロヴァンスの贈り物(ラッセル・クロウ、マリオン・コティヤール主演)」で
舞台となったワインシャトーのもの。
おお!なんと!あの地に来てしまっている。
そう思った途端、ワインがお腹をあたためて、
じわじわと感動に変わってゆく。
j'adore ce film.
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=326218
部屋はふたつあって選べる、とわざわざ見せてくれる。
バスタブもおおきく、ロクシタンのアメニティ。
ちなみに何故か安くしてくれた。
Luberon地方の人たちは、なんて素敵な質なのだろう。
本当に存在するのだろうか。
こんな素敵な村、人、オーベルジュ。
宿指標も村指標も最高レベルに達した夜。
ハッピーエンドストーリー♪
翌朝目覚めると、緑と光が幻想へと誘う世界が続く。viva, Province.
パンは二種類あって、フカフカ。その上朝食に生ハム。面喰らいました。
シニョンの極上オーベルジュ
「 l' Auberge du Presbytère」
http://www.auberge-presbytere.com/