6/06/2009

ゴースト疑惑の果て-il est le dieu!

ゴルドから引き続き宿を求め、
サンパな名前の
「ルシヨン」という村を目指す。

しかしサンパなはずのそこに着くと、

一件目にして「今日は満杯だよ。ほかも絶対にない」と言われる。

二件目にはBBに行くが、

「今日はない」とやはり言われる。

APT(アプト)に行けば見つかる」と宿の主人に言われる。

そのアドバイスを信じ、

日本人の最強兵器「地球の歩き方」をついに開く。

今度はきちんと予約を、と、

唯一載っていたAPTの宿に電話をする。


名前の響きがどうも好きではなかった。

そして、APT(アプト)に着くはいいが、この暑いのに

街路樹にイルミネーションが飾られたりしている。

あまりの微妙なセンスにすっかりテンションが落ちる。

こんな村に泊まりたくない、と率直に思う。


地図にある通り、電話で予約したホテルの前に着くが、

どうも違う名前である。

不思議に思い、宿の主人と連絡をとる。

15分で迎えに行くから車の中で待っていて」と宿の主人。

途中、酔っぱらいにガラス窓を叩かれて恐い思いをする。

5人くらいの質のわるそうな人が、

次々とドアをノックしてはあきらめ去ってゆく。

そんな中途半端な行動は、しなくてもよい。

電気をつけて地図を見ていたので、

蛾のように寄って来てしまったようだ。

尚更「APTアレルギー」に加速がかかる。


30分待ってしびれを切らしたころ、ようやく、

何故か家族全員を乗せた車で主人がやってくる。

もう夜の22時半。

後部座席には可愛い子供が3人乗っていて疲れ果てている。

なんだかすまない気持ちになる。


「私たちの車の後をスイーヴルしてきてね」とマダム。

腹ぺこで疲れ果てたわたしたちは、

半ば夢心地・眠り心地で彼らの車の後を追う。

しかし、追っても追っても全く着く気配がない。

APTLuberon地方の小さな村に過ぎないはずなのに何故?

そのうち、APTを出た印を目にする。

何が起きているんだろう?

どこへ行くんだろう?


「あの人たち、まさかゴーストじゃないよね」

私は真剣に友人に聞く。

どうかな、ひきつり笑いをしながら、友人は必死で後を追う。

そう、彼らは早い。カーブだろうが速度を落とさない。

このままでは命を落とすのでは、と真剣に彼らについて疑い始める。

「ほんとにゴーストなんじゃない?死の世界に誘ってる、みたいな。

こんな夜遅くに子供三人ものっけて皆疲れてて顔色悪いし。

なかなか着かないし」

なんて真剣に相談し始める。

しかし、何度考えてもやはり夢でもない。


20分程走った頃、すっかり丘の上にある村に入る。

あやしい。


でも、ゴーストなんてそう出ないだろう。。

もしかして、わたしたちこそ何かを間違えていた?

むしろそう願いたいほど、恐い。

そこでもう一度「地球の歩き方」を見てみる。

すると...、やってしまった。

APT」のページの横に、とってつけたように

細文字で「Saignon(シニョン)」という村の説明がある。

その下にわたしたちが電話をしたホテルが載っているのだった。

なんと。ここはSaignonです。

あまりに疲れていたので見落としていた。

隣りの離れた村なのに、わざわざ迎えにきてくれるなんて、

なんてジョンティな人なんだろう。

しかも子供も我慢を強いられている。

今度はゴーストではなく、神々しいものがご主人の背後に

見える気がしてくる。

(疑ってごめんなさい。)


車を降りてさらに驚いたことに、村全体が

あまりにも洗練されている。

暗闇の中に浮かび上がる光景は、

映画の舞台のような場所になっている。

噴水と昔の洗濯場がアートのようにコテンと配置されている。

ホテルというかオーベルジュは、

噴水を望む広場にある。


村全体がシックな石造りで、魂が抜けそうになる程美しい。

(この美しさは次回お伝えします♪)

夜なのに。伝わってくる。

こんな素敵なところに導かれるなんて、

なんてラッキーなのだろう。

四つ星ホテルの塀を無様にもよじのぼった甲斐がある。

APTでテンションを落とした甲斐がある。





その夜、実はご飯を食べていないというと、

シェフに言って作らせる、と23時にも関わらず言ってくれる。

ミシュランに載っていることは、後で知る。




友人と疲れの癒しに開けたこのワインは「LE CANORGUE 2005」。

映画「プロヴァンスの贈り物(ラッセル・クロウ、マリオン・コティヤール主演)」で

舞台となったワインシャトーのもの。

おお!なんと!あの地に来てしまっている。

そう思った途端、ワインがお腹をあたためて、

じわじわと感動に変わってゆく。

j'adore ce film.

http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=326218


部屋はふたつあって選べる、とわざわざ見せてくれる。


バスタブもおおきく、ロクシタンのアメニティ。


ちなみに何故か安くしてくれた。

Luberon地方の人たちは、なんて素敵な質なのだろう。

本当に存在するのだろうか。

こんな素敵な村、人、オーベルジュ。

宿指標も村指標も最高レベルに達した夜。

ハッピーエンドストーリー♪

翌朝目覚めると、緑と光が幻想へと誘う世界が続く。




viva, Province.




私のレストランの善し悪しは、パンで決まります。
パンは二種類あって、フカフカ。その上朝食に生ハム。面喰らいました。

シニョンの極上オーベルジュ
「 l' Auberge du Presbytère」

http://www.auberge-presbytere.com/

6/03/2009

四ツ星の塀をよじ登る-guidée par le chat-


カヴァイヨン(cavaillon)のサン・ジャックの丘で会った人の
おすすめの地「
Gordes(ゴルド)」。



その見聞は見事に大あたりであった。
感嘆のため息が何度も出るほど美しい!



自転車を置き捨て、丘を駆け上ってしまうような
爽やかな人種の目は、確かであり澄んでいる。
今後のためにそう記憶することにする。


ここはまるで、フランスの中の「サントリーニ島」である。



崖を段々とおりてゆくように続く白いおうちと青い海、の代わりに、
シックな石造りの家と緑の山がすっぽりと額縁に収められている。
印象画家が好きそうな光景だ。
当時の才ある人にここを描く場所として教えてあげたい。
(余計なお世話だろう)



とにかく素敵すぎる光景に圧倒される。
何を撮っても嘘みたいになり、
人を撮ると浮いてしまい、光景にマッチしてくれない。
現実離れして見えもする。
写真嫌いな友人も、ためらわず写真に収まることにする。
ちなみにここは、イギリス人やドイツ人がこぞって別荘を買い求めてきた、
夢のリゾート地である。
私には年に一度の伊豆高原が精一杯である。



Gordesにもまた、第一次大戦で亡くなった
子供の兵隊へと捧げられたstatuがcentre villeの真ん中にある。


ここら辺は、石を積み上げて作られた家々が村をかたどる。



昔は家畜小屋だったらしく、当時のままの姿が残る
「village de bories」が車で5分程のところにある。
見事に石を積み上げて塀も家も造られているようだ。
既に閉まっていたので塀の中は見られなかった。



Gordesに着いた時、既に雲行きが怪しかった。
シトー派修道会(Senanque
)に行こうかなどさんざん道を迷い、
気付けばもう20時。
気ままなわたしたちは宿などとっていない。
そこで、村に入ってホテルを尋ねることにする。
しかしカフェで聞いたところは全滅。
仕方ないので、シラミ潰しにホテルをあたることにする。
B&Bがあったので、中に入って尋ねる。
「B&B(bed&breakfast)」の響きにテンションが一瞬おちる自分に気付く。
しかし、それは名ばかりで、
尋ねてみると庭には噴水があり、ひとつひとつがprivéの棟
になった上質な宿。



これでふたりで100ユーロもしない。
なんとも、あり得ない贅沢!
ここにむしろ泊まりたい。
しかし既に今日はcomplait。
がっくりして次を目指す。
連休なので、どこも既に予約でいっぱい。
マイペースなフランス人に負けるとは
どれだけのんびりなふたりなのか。

最後に残ったホテルは、四つ星。
大粒の雨が少しずつ足早に降り始める。
払えるか分からないが、とりあえず
雲行きに押されて一応そこもあたることにする。

車に友人を残し、
大きなゲートをくぐって長い小道を歩く。
すぐには着かない。無駄に大きい。



手入れされた木、整然と敷かれた白い小石。
やっと辿り着いたエントランスで人を呼ぶが、既にいない。
先ほど園内ですれ違った車が管理人か。ひと足遅かった。
古い館のようなエントランスは、
ひっそりとしていてプロヴァンスの人形などがこちらを見下ろしている。
恐がりの私には相当気味が悪い。
おまけに人の声すらしない。

恐くなって来た道を戻ると、
なんと
大きなゲートに頑丈な扉がしっかりと閉まっている。
この10分の間になんていう変わりよう。
ゲートの横に暗証コードを押すボタンがあるが、
残念ながら客ではないので知らない。
唖然としていると、大粒の雨が勢いよく降り出す。

もっと唖然としていると、
足だけが白い黒猫がなつっこく寄ってくる。
靴下を履いた猫みたい。可愛過ぎる。
猫好きの私はゲートが閉まった事実そっちのけに、
雨に構わず写真を撮る。
可愛過ぎる。
すると、その猫はゲートに飛び乗り、
木登りをして私を見下ろす。
身軽でいいな。あなた。

携帯で友人を呼び、心細いのでゲートの向こう側まで来てもらう。
「ここを越えるしかない」とゲートの向こうで友人の声がする。
ゲートの背はぐんと高いが、足場がひとつだけある。
「え。まじで。無理無理。最近運動してないし。」と思う。
「てっぺんまで来たら私が支えるから。私を信じて。」と向こう側で友人が言う。
本気で躊躇して迷う。
しかし、時速130㎞の彼女の運転も既に信じてるしな、
などと考える。
この旅では、彼女に「信じて」という言葉を3回程言われた。
慎重な私は、勢いをつけて人を信じるということを
彼女に教わった気がする。
ありがたい。
いつまでも忘れられない体験だ。

すると、猫が木の上からこちらへとゲートの上に飛び乗ってくる。
私をいざなっているのか?
いよいよ決断の時。
猫が可愛い素振りでプレッシャーを与えてくる。
そうだ。
猫にもできるのだから、私にできないはずはない。
可愛い猫と張り合うことにする。

そして私は、猫に導かれるように
その四つ星ホテルのゲートに乗り、
無事向こう側へと帰る。



高級リゾート地で何をやっているのかよく分からないが、
とにかく宿が決まっていないことに焦りを感じてくる。

宿を求め、
Gordesよりもリゾート地ではなさそうな名の響きの、
Rusillion(ルシヨン)という村へ走ることにする。

一人旅なら必ず一日前には宿をとるけれど、
車でのふたり旅なら断然こんなぶらり旅が好きである。
思いもよらぬ出来事が待っていて数倍楽しい。

ぶらっと-à cavaillon en Luberon-

晴天。
完全に肌を焼きつくしてしまうような日射しの中、
PAUから逃げるように東へ走る。


旅好きの友人と、週末のぶらり旅に出る。
今週もまた3連休。休みばかりのフランスである。
落ち着かない旅人は、明日の行き先も当然決まっていない。
アヴィニョンに着いた夜、ベッドの中でなんとなく決まる。

気になっていたエクサンプロヴァンスへは、
いつでも電車で行けそうだ。
ということで何故か、
聞いたこともなかった「リュベロン地方」を巡ることにする。
よくおしゃれ本で特集をしている、
「シャンブルドット(chambres d'hotes)に泊まる!」
というあれが多いところだ。
あれかぁ。
某誌で見た時、
やたら日常離れした印象があった。
すっごく遠い世界のことのように感じていた。
もうフランスに来て十分日常離れているケド。
どうなのかなぁ。
迷う。
しかしとにかく暑いし、エクサンプロヴァンスにだって海はないし、
折角車もあるし、
もうどこでもいい。
よし、リュベロンへ行こう。
音もいい。
聞こえは重要だ。



アヴィニョンをひと通り巡った後、まずは
リュベロン地方の西の入り口「カヴァイヨン」
という町を目指すことにする。
そこまで行ってイマイチだったら、南へ下ろうではないか。

ちなみに、カヴァイヨンはメロンの産地と書かれている。
ひとつ1ユーロで買えるそうだ。
メロンですか。
大きい包丁ないし買わないかな。
あまり魅力を感じないが、とりあえず向かう。




フランスの高速は、130km/hがリミット。
スローライフ好きな私にはたまげた事実。
友人はとばす、とばす。
恐いもの知らずな相棒が出来てひと安心だ。
(私の運転は超危険なので、おとなしく助手席でナビをする。)
上のウィンドウを開けると、
風の音で耳の鼓膜が破れそうになる。
ひとつだけ幸運にも借りられたオートマの「smart」。
超が着くほど可愛い車だ♡

しかし中が暑い。モンヤッ。
冷房が扇風機のような温風をはこび続ける。
何故君はそうなのか?

chocolatが2枚ともとろけて食べられない。
窓も開けられず、半ばのぼせながらカヴァイヨンを目指す




centre villeに着くと、ローマ時代の凱旋門が残っている。
私が南仏を好きな理由のひとつに、
ローマ帝国時代の名残りが
あちこちに垣間見えるところにある。
イタリアに行けばいいのだけど。



そのすぐ後ろには
平たいオレンジ瓦の屋根のおうち。
なんとも贅沢でアーティスティックな借景。
さらにその後ろには、丘。

寄り道の記念に、サン・ジャックの小高い丘を登る。
さすがに汗もかく。
自転車を降りて駆け上る人もいる。

頂上に着くと絶景に感嘆。
平たい屋根の家が他にもたくさんある。
トゥールーズのオレンジの屋根の町よりもずっと見渡せる。
その向こうにはさらに丘。
リュベロン地方には丘がそこらじゅうにころころ転がっている。
四方八方丘だらけだ。
ピレネーの険しい表情とは一転して、
穏やかに時間が流れる気がする。






期待していたサン・ジャック修道院は既に閉まっている。
ローマンでもゴチックでもなく、素朴なつくり。
教会建築とは一転した佇まい。
これまた穏やかな時間の流れを感じさせる。




丘をかけのぼった人が先に着いて水道で水浴びをしている。
汗なのか水なのか分からないがびしょびしょである。
その人にリュベロン地方のいいところを聞くことにする。

Gordes(ゴルド)という町が素敵だということで、
北東を目指すことにする。
人づてに聞いたところを目指すのも旅の醍醐味。
無欲にGordesへと向かう。




「カヴァイヨン」に興味のある方はこちら↓
http://www.cavaillon-luberon.com/cms/