5/26/2009

届け物を追う -ouf! Merci LA POST...-

PauをNiceやMontpellierのように温かく陽気な地だと思っていた。




だから夏物しか持ってこなかった。

しかし着いてみるととっても寒い。

ピレネー山脈が美しく光って見えるのは良いが、

5月になっても風邪と背中合わせの暮らしである。

遠くに霞んで見えるピレネー、その上方には白い衣。

何気なく見ていた美しい姿。

しかしあれは。

紛れもなく、雪。


強い日射しが消えると、気まぐれにも冬の風が吹いたりもする。

空気の温度は、陽が落ちきった22時を境にサクッと変わる。

今日は一日中セーター2枚程と薄手の冬コートを着て過ごした。


そんなこんなで、日本からコートやブーツ、

ついでにバッグを送ってもらうことにしていた。


首を長くして待つこと二週間。遅い。そして寒い。

その間、寒さに耐えかねて服を買おうと学生都市からはるばる

街に行く(歩いて20分)。

しかし店では暢気に夏物などを売っている。

薄い生地を見ると鳥肌がたつのに、また何故?



ある日、待ちに待った日本からの愛おしい荷物が

このアパートに来た形跡を見つける。

涙が出る程嬉しい。

しばしその眩い不在届けを眺める。

時間指定の再配達などがあるのか電話をしてみる。

「荷物の番号を言うから調べて欲しい」と言うと、

「おそらくもうここ(La Post)にあるから、近いし取りに来たらどうか」

と私の質問は遮られる。「おそらく?」という言葉に

ひっかかりながら、パシル。


「届ける」ことが仕事であるはずのポストマンが、

現代のフランスに至っては荷物の一時預かり所となっている。

それはなぜ?

取りあえずパシル。


La Postに着くと、受付の人が「あら、さっきの電話の人ね。」

と素早く対応してくれる。いい感じ。

mais!思った通り。

「あらやだ〜、ここにないわ。キットまだ配達の車の中ね。」

暢気な口調でしゃべる。

軽い。

軽すぎて冗談かと思った。

「17時にはここにあるはずだから、また来て」

悪気ない。何気ない。

ダブルパンチをくらうが、こういう所も段々慣れてきた。

電話口で調べないのはなぜ?

ゲソッとしながら、諦めて授業に戻る。


学校が終わり、再び急いで郵便局へ走る。

時間通りやっているか心配でたまらないのだ。

La Postに着く。

まだ開いているという事実にまずはホッとする。

すると、別のマダムが対応する。

「あら、ないわ。」

あっけらかん。

さすがに不信を通り越して怒りが沸く。

驚きにすら変わる。


「あると言われて今日はもう二回も取りに来てる。

 追跡するシステムで調べて欲しい」と私は言う。

するとマダムはパソコンのところによっこらしょと移動する。

こちらの人は言われないとどこまでもさぼろうとする。

「なるほど。ここではなくて、集荷のところにある。

歩いて20分のところだから、今日行けば受け取れる」

ならば、と、荷物の大きさを聞く。

すると「知らない、分からない」という。

重かったらどうするんだ?と思いつつ、

ならば道端で助けを求めよう、と私もとうとう開き直る。

ここフランスでは、何を言っても「ひとごと仕事」が存在する

ある一定の場所がある。

LA POSTに至ってはさらに「お役所」。

諦めを知らないといらだつことになる。損だ。

呆然としながらそこを去ろうとする。


その瞬間、「マドモワゼル、ここにあったわ!デゾレ!」

という声が耳に入る。

・・・軽いなぁ。ほんと。


日本人の私にとって、フランスの郵便局は効率が悪く映る。

日本の郵便局はとてもユーザーに易い。

荷物を受け取れなくても、心配などすることはない。

電話やパソコンで追跡番号を入力すれば、

時間指定届けまでしてくれる。

一度届けていなかったのだから取りに来い、という返答など

あり得ない。(それともPAU特有なのか?)

やる、ニッポン!


さらに翌日。

実は2つ同時に送られてきたはずの荷物が、

まだ1つしか届いていなかったという恐るべき事実を知ることになる。

もう今更驚かない。

驚いたら負ける気がするのだ。

例によって不在届けが投函されていたので、

何も期待せず、無心でLa Postまで走る。


好奇心から質問をする。

「何故ふたつ一緒に受け取れないの?

同じ日に同じ日本から同じ住所、しかもPAUに宛てられたのに?」

すると馴染みのLa Postの顔は、「知らないわ〜。(Je sais pas〜〜)」。

首をエレガントに横に振る。

いや、是非知ろう。

知ってくれ。

そこはきちんと追跡してみよう。


箱を開けると、懐かしい馴染みのアイテムが顔を覗かせる。

アイデンティティの一部が蘇ってくるかのようだ。

日本では数あるうちの一つに過ぎなかったアイテムだけれども、

今となっては、はるばると日本からやってきた顔ぶれ。

厳選されたコートやブーツやお茶。

それらが初めてこの上なく愛おしく感じられた。


同時に、大量に物を消費していた日本での生活を反省する。

ものを大切にする、という知恵や心の奥行きや感謝の

足りない暮らしをどれほどしていたことか!

欲望のままに服を大量に買い、仕事の忙しさを言い訳にする。

それが私であった。 


その途端、La Postのシステムの非効率など、

どうでもよくなってくる。

本当にどうでも良い。

私にフランスのシステムなど変えられたものじゃない。

後は暗黙のルールを知って従うことに慣れるのだ。




受付の首振りマダムは「bonne soiree〜」

を堪能するために仕事半分に切り上げると良い。

「明日もJe sais pas〜」とゆるく対応をすると良い。

配達係の人だって。

明日も無事に「不在届け」をポストに入れるのだ。

そう、がんばるのだ。

無事故運転を祈る気持ちすら涌いてくる。

ただの「不在届け」投函者でも、ゼンゼンいけている!


こうして人間が丸くなってゆく。良いのか悪いのか。

「〜べき!」的にとんがっていたシビアな自分が嘘みたいに削られて、

寛容という二文字を知ってゆく。

viva ラテン。

そして、私にこんな変化をもたらす、ゆるいLA POSTに感謝。

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