5/13/2009

あそぶ -permi jeune-

taschacite universite(学生寮)から脱出を果たした。



tashcaいわく、「トイレが汚いのがいや」だという。
流暢な日本語で話す。

「海外でトイレに入る時は汚れがひどいから

便器に紙を敷くしかない」と私。

taschaは「私座らないね。」これまた流暢な日本語で。

彼女は背がとても高い。

だから、汚された男女共用のトイレの便器などに何も座る必要がない。

こちらの女性は、ほぼそうしているようだ。



tashcaの家は、私の住むアパルトモンとは、

だだっぴろい学校の敷地を挟んで丁度反対側にある。

引っ越しソワレなので、アルコールを飲まないtascha用に

sans-alkoolのシャンパンをお祝いに買って行く。

通り名と番地と、隣にある食べ物屋の名前を聞くだけで、

ここpauではどこへでも行けてしまう。

行ったことがなくても、簡単な地図で事が足りてしまう。どんなに方向音痴だとしても。

tashcaの家まで歩いて20分。その間、

通り過ぎた建物といえば、スーパー2件、銀行4件、食べ物屋2件。ほかは芝生。

superbe!



ここはあまりに建物がない。あるところであっても、そこは一カ所だけ。

まるで、迷うことこそが楽しかったmykonos島を思い出す。

結局辿り着けるのだから、迷うことに味をしめてしまうのだ。


tashcaの家に着くと、シェアメイトのreilaと、他二人の彼女らの大学の友達がいた。

ほとんどが日本に一年留学していたという。

今はフランスに来てフランス語を学んでいる。

在学中に2カ国語を習いに海外にいかなければならないとは、

いい風習を持つ大学である。viva England.



私の感覚では、食べ物を作ってこなかったのが気がかりであった。

朝早くから夕方まで学校に行くと、さすがに料理をして出掛ける気力がない。

でも、10歳下の学生にとって、スナック菓子とワインやカクテルなどで事が十分に足りてしまうのだ。

これまたsuperbe!



遅れてoliviaが来た。oliviaは、笑顔がとってもキュートで9等身はある、

これまた同じ大学の同級生だ。

彼は女の子の中に一人入っても何の違和感もなく一番よくしゃべる。

彼がやっと靴を脱ぐと、色の違う靴下を履いている話題で盛り上がり、

私は笑いが止まらなくなる。イギリス人の英語は私には難しい。

だから会話半分、あとは靴下のことばかり考えてしまう。

さらに、oliviaは、ビニール袋

(といっても、こちらのスーパーの袋は、何度も使える

プラステックに近い頑丈なつくりである)からもうすぐなくなるコーラのボトルと、

あと5杯くらいでなくなるリキュール1本と、1杯でなくなるリキュールとを

おもむろに出し、飲み始める。家から持ってきたようだ。

おそらくここで全て飲み干し、帰りは手ぶらで帰るという魂胆である。

こちらの学生は、極端にお金を使わない。

日本だったらあり得ないけれど、平気な顔をしてちびちびと節約をし、

靴下のびっこに構わず、端正な顔立ちの少年はお酒を飲む。

superbe!




学生はあまり悩みがない。だから愚痴もない。

そこで、一同、4拍子のリズムにのせて、

数字で次の人にパスをしていくゲームで盛り上がる。

oliviaはどうも飲み過ぎたのか、天然なのか、よく間違える。

その度に「boir!(飲め)」とtashca言われて飲む。

10年前、私が大学生だったころ、何か粗相をすると一気飲みをする、

というサークル特有のあのテンションである。懐かしい。。。


あれよこれよと盛り上がっていると、

隣から生演奏のギターの騒音がする。

結構音が大きく、うるさい。数字が聞き取りにくくて次々と間違える。

その人は無駄に「boir!」と言われるては飲む。

気になって一同ベランダに出る。

隣の部屋でアコースティックを弾いている人物を確認し、

何も言わずに一同部屋の中へ再び戻る。

すると、お隣さんのフランス人Johnが、

いつの間にかギター片手に仲間入りをする。

taschaが知らぬ間に声をかけたそうだ。




はたまたゲームの続きをする。今度はフランス語と英語で話す。

たまに私が分からないと、tacshaが通訳をしてくれる。

「J'ai jamais〜」ゲームでは、「私は決して〜したことがない」

と一人ずつ言う。

その中で、それをしたことがある人がいっせいに無言で飲む。

すると、「あなた、〜したの?!」「いつ?!」

という会話が弾んでいくあそびだ。

これは結構、人生の告白に近い感覚で、

囲んだ輪に親近感を覚えずにはいられない。





ゲームに疲れたころ、

ベランダから花火のようなニオイがする。

目の前にあるヤシの木に、誰かが火をつけた。

一同ベランダに出て騒ぐ。

5分ほどで火はおさまり、火の気がないヤシめがけてパトカー

と消防車が勇んで突進してくる。

ここは何もかもがスロウである。

おどけて見える。

どの木に火がついているのか分からず狼狽える出動者を見て、

一同笑う。「4番目のヤシの木だよ!」とジョンがベランダから教える。


こうして夜が更けていく。

若い遊びに少しつかれた私は、

tashcaとreilaにbisuをして、夜道を歩いて先に戻る。

Pauの夜道は恐くない。東京やパリでは恐かったのに。

何故だろう。

ここでは、もし悪いことをするとしたら、

その人はとっくにこの町から出て行っている気がするから。

ここにいる人は、退屈に対して忍耐強いがゆえ、

人に危害を与えるような横着者がいない気がするのである。




さいきん身体も気持ちも、とてもリラックスして過ごしている。

帰る道すがら、大学生の輪に再び戻っていることへの驚きと、

もうこの違和感に慣れてしまった現実味をかみしめる。


人生は長いものだ。10年ぶりに学生をするなんて、思ってもいなかった。

卒業後は、真っすぐにやりたいことを突き詰めてゆくだけだと思っていた。

そんなホリズンタルな人生観を脱し、私はヴァーティカルに寄り道をしている。

ひょんなことから、幅広く生きている。こうして。

明日仕事だから今日はたっぷり、という束の間の遊びではなく、

時とともにゆるりとあそびながら生きている。

superbe!


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